TechとPoemeの間

Qiita に書かないエンジニア業の話

RSGT2024 1日目で印象的だったセッション3つ

普段はこういうの書かないんだけど、今日は覚えておきたいので書く。

よいチームをよい雰囲気を保ったままよい組織にスケールさせていくためにできること

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及部さんも毎年のように RSGT でセッションを担当されていて、毎年とは言わないけど、結構な割合でその発表を見させてもらっている。そうやって「連続モノ」としてとらえるようになり、最近は及部さん自身の「キャリアの旅」みたいなものを感じるようになった。自分の先を走るスーパースター(スターじゃなくてモンスター?)も、こんな風に一人の職業人としてキャリアを積んでいくんだとリアルタイムで実感したり、数年前とは全然違う仕事をしていて、それでいて全部が及部さんらしい、少し不思議な感覚を覚えたりする。

今回の及部さんのセッションは、序盤で「良いチームを作ることに興味があるが、それをスケールさせたり、複数のチームをマネジメントすることには興味がわかない」と書きながら、結局は現職でその仕事に「自身のやり方」で踏み出し始めた話が(敢えて頭悪い書き方をするけど)最高にエモかった。そして及部さん自身がそれまでのコミュニティ活動で培ってきた経験やプラクティス、さらに各種理論で裏付けながら自分の仕事の変化をまとめられている様子を見させてもらい、「あぁ自分ももっとこうやって裏付けを持って仕事で成果出していかないとな!」と、今年もRSGT特有の元気をもらえた瞬間となった。

エンジニア組織の経営論 〜エモい開発と売上数字は両立するか〜

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「物好きが集まった」(漆原さん談)ナイトセッションも、さすが漆原さんというトークだった。

最近も話題になった「経営がわかるエンジニア論争」だが、漆原さんの指摘は「経営やビジネスの話をエンジニアが "うっ" と思うのは外発的要因に紐づく数字ばかりがビジネスや経営だと思うからではないか。」というものだった。細かい話の流れは省略してしまうけど、結局は「経営者やビジネスオーナーの内発的動機を揺さぶるワクワクするものに共鳴できるか」。漆原さんいわく、マツダの人はこっちが追いつけないくらい発動機の話をするし、カゴメの社長はリコピンがいかにすごい物質であるかを語りだしたら止まらない。そんな人たちに、技術の専門家として立ち向かっていけるか。

自分自身のこれまでのキャリアを簡単に振り返っても、仕事が楽しいときは、「社内のいろんな人がワクワクしてるもの」を聞き、それに共感できること自体が楽しかったし、その「ワクワクの振動」に「自分が楽しいと思うもの」をぶつけてさらに面白がりあえることが楽しみだった。逆に言えば、楽しくなかった仕事には共鳴するワクワクを見出せなかったこと*1ばかりだった。

経営者として技術組織を経営するためにできることは「没頭・成長・ポジティブ」に溢れる環境づくりだ、という話も、当初期待していたものではなかったけど、いろんな勇気をもらえた。忘れないで今年1年を過ごしたい。

証券取引所のサービスをアジャイルに開発し続ける上での学びと取り組み〜信頼性とアジリティの両立を目指して〜

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自分のキャリアの半分以上の時間は金融領域でエンジニアリングしてきた時間が占めているので、「金融領域の仕事だからアジャイルでいられない」とは全く思っていない。それでも、というか、だからこそ、制約の多い環境下で実際にアジャイルであり続けようともがく人の話はやっぱり聞きたくなるし、話を聞きながらいろんなことを想像してしまう。

品質保証における「最も防ぎたいシナリオ」を出発点とした重点施策の話や先物対比に関するプロダクトリサーチの実例も興味深かったが、一番印象深かったのは「チームイベントの持続的な改善」にまつわる話だ。

午前中の基調講演で Dynamic Reteaming が取り上げられていたが、この事例でも「チームのメンバーは年単位で見れば大半が入れ替わる」ということを念頭に置きつつ、立ち上げ期の思想や情熱が人員異動とともに失われてしまうことの対処として、スクラムイベントやプラクティスなどの「チームのあり方」を定期的に見直す仕組みを導入した、という話。

組織の中に様々な仕事があったとき、ともすると、何かの「立ち上げに関わること」が最もチャレンジングな仕事であると捉えられてしまうパターンは少なくない。何も無かった更地を自分色に染め上げて一旦の「完成」にたどり着き、それを「自分の作品」と呼んでしまえば、たしかにわかりやすい成果になるし、組織内でも評価されやすいだろう。

他方で現実問題として、大きい組織であればあるほど「新しく始める仕事」よりも「保ち、さらに大きくする」仕事が多くなるのも必然だ。そこに関わる人も同様に評価されるべきだが、少し気を抜くと、「保つ仕事」には「自分で考えて新しい何かを作る」機会が生まれず、「保ち、更に大きくする仕事」が「単に保つだけ」の仕事になってしまうこともある。

今回の事例では、「チームのあり方を作る」という観点ではその時々にチームに身を置いたものが自分でチームを作るという仕組みがあった。こういうチームが組織内にいくつかあって長く続けば、そこで育った人材がまた巣立ってゆくという新陳代謝が生まれる。そうすると、組織全体で見ても「あそこで育った人ならきっと大丈夫」という安心感のある「ブランド」として機能するし、組織全体にとって良い影響をもたらす。私自身の経験になるが、かつて働いていた職場で「開発リードのゆりかご」と呼ばれたプロダクトチームがあった*2のだけど、あのチームはこういう土壌から生まれたんだろうか、と、講演を聞きながら想像を巡らせていた。


当日の撮って出しな記事なので乱文な部分もあると思うが、ここらで。明日も目一杯ギャザろう。

*1:自分が気づけなかったり、興味を持って深掘りできなかったことがほとんど。

*2:その組織は複数のプロダクトチームで構成されていたのだが、多くのプロダクトの開発リードがあるプロダクトのチームの出身だったことが話題となったことがあった