TechとPoemeの間

Qiita に書かないエンジニア業の話

社員数が100人に迫っても社員と社長との距離を保つ「CEO Radio」の取り組み

今年の2月より、FOLIO という会社で働いています。本業はバックエンドシステム開発とかエンジニアリングマネージメントなのですが、それとは別に、「社長による社内向けの音声コンテンツ」の企画及びインタビュアーをやっているので、その話をしようかな、と思います。

この記事は、そんな FOLIOアドベントカレンダー 2日目 の記事です。昨日は id:ken5scal による 『踏み台環境でテレポートする』でした。

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組織の「100人の壁」

自分が入社したときの FOLIO は50人から60人という会社でしたが、私の加入後にも続々とメンバーが参画し、今では100人に迫ろうとしています。 一般に、組織には「100人の壁」と呼ばれる、会社規模が大きくなることで発現する組織課題があると言われています。実際に FOLIO でも、今年の初めには1フロアだけだったオフィスも3フロアまでに拡大し、コミュニケーション不足を感じることも増えてきました。

中でも、社員と社長の関係という観点では、去年は CEO の甲斐ががオフィスをフラッと歩いて社員と気軽に話して事業のビジョンなどを共有することができたものが、メンバー社歴やオフィスの中のよく活動する場所、仕事の内容によっても甲斐と慢性的に距離のある立ち位置にいる社員が出てきたのも事実です。もちろん、甲斐もそのことは理解しており、各メンバーとコミュニケーションが取れるように考えたり動いたりしてくれますし、実際お昼時にオフィスの真ん中でメンバーの皆とカレーを食べている姿もよく見かけるのですが、「気をつける」のではどうしようも出来なくなるのが、「100人の壁」の特徴のひとつなのかもしれません。

理想を述べれば、社員の一人ひとりが社長のビジョンを理解し、共感できることが大事であることは疑いようがないでしょう。特に、今年の FOLIOLINE との資本業務提携を発表したり、新しいサービス「おまかせ投資」の提供を開始したりと、会社としてのこれまでにない動きも多かったので、今、社長がどのようなことを考えていて、自分の仕事にはどのような意味があるのか?をメンバーがより深く知る機会を設けることは非常に重要でした。

その理解を助けるための試みとして今年の7月から始めたのが、CEO Radio です。

CEO Radio のきっかけ

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CEO Radio の社内向け配信サイト (2018年12月現在)

CEO Radio は1回10分~20分程度、CEO の甲斐と、聞き手の私、そして時には FOLIO の様々なメンバーが何らかのトピックについて話したものを、社内でメンバーが好きなときに聴ける音声コンテンツです。

この CEO Radio の始まりは、6月のとある社内の食事会にて、社長とバックエンドエンジニア数名で、「最近の会社の課題」に関する話題になり、上述のような課題をメンバーが挙げた際に、私が言及したのがきっかけでした。

FOLIO のメンバーは原則として、ジョインする際の選考プロセスの中で必ず CEO の甲斐と話すようになっており、メンバーの多くが甲斐の「世の金融の常識を変える!」というビジョンに共感して参画しているのではないかと思います。それでも、甲斐の考えを、入社時や偶発的なコミュニケーションだけではなく社内の興味あるメンバーには継続的に伝えられるようにし、しかも形に残すことで将来ジョインするメンバーにも FOLIO の文化や価値観を知ってもらえるようにすることは有意義なのではないか、と考えたのが CEO Radio の始まりでした。

私の頭の中にあった先行事例

私が「CEO Radio」を提案した際、頭の中には2つの先行事例がありました。

ひとつは、 2017年にあった 「XP祭り 2017」にて、ソニックガーデンの倉貫社長が紹介されていた、ご自身が取り組まれている「社長ラジオ」です。ソニックガーデンはほとんどの社員がリモートワークをしている会社であり、メンバーと社長のフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションが比較的少ない会社であるために、会社全体のことを伝えたり、会社の価値観や動機づけになるような話をするための仕組みだったそうです。

また、私の前職であるサイバーエージェントの「カルチャー推進室」が、私の頭の中にあったもうひとつの事例でした。
サイバーエージェントは広告・ゲーム・メディアという大きく3つの部署に分かれていますが、その部署の垣根を越えて仕事を行わないメンバーというのも多く (私もその1人でした)、部署などの組織ごとに独自の慣習や価値観が醸成されている会社でした。しかしながら「サイバーエージェントらしさ」という価値観や文化は明確に存在していましたように感じました。その全社で一貫した文化の醸成に一役買っていた仕組みのひとつが「カルチャー推進室」の活動だったと私自身は理解しています。各部署のキーパーソンへのインタビューや、社歴の長いメンバーのキャリア遍歴、過去にメンバーが苦闘したプロジェクトの歴史などが社内ポータルサイトや社内刊行物などを通して全社員に発信されており、サイバーエージェントにジョインしてすぐのときに感動したことを覚えています。

明確に形に残されているものを追うことで、文化や会社の歴史に対する理解を深めることができました。私にとっては初めての転職であり不安も大きかった中で、「お客さん」になってしまって会社の文化に馴染めないようなことがなかったのはとても大きかったなと感じています。

CEO Radio を支える技術

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最近の CEO Radio の収録風景

CEO ラジオの収録を行う際には、以下のような機材を用いています。

マイクなどの各機材は、当初は社内メンバーの私物のマイクを使っていたこともあったのですが、回数を重ねて CEO Radio の有意義さに対する理解が会社全体に浸透してきたタイミングで、会社の経費で購入したのが現行の機材です。

機材選びで気をつけたポイント

マイク選びは、複数の話者がいるなかで1本のマイクを利用するので、当然ですが無指向性マイクを利用すること。そして、盲点になりそうですが重要なのがサウンドカード選び。サウンドカードを単純に「USB と 3.5mm ジャックのアダプタ」と捉えると痛い目を見ます。実際、当初購入した安価なサウンドカードでは細かい音が全く拾えず、後から現行のサウンドカードに買い替えたことでしっかりとトークの内容が聞き取れる音声を収録できるようになりました。

収録と編集

収録ソフトは、以前は QuickTime Player で収録して、特に編集もせずそのままアップロードという形にしていました。回を重ねるにつれて、収録後に一部カットが必要になったり、複数の音声ファイルを接合しなければならない需要も出てきたため、GarageBand で最低限の編集をするようにしています。やってみて改めて思うのですが、編集は凝ろうと思えばどこまでも手を入れられてしまうのですが、私の本業は別にあるので、時間を使いすぎないよう気をつけています。

社内配信

社員への配信方法は、当初は Slack アプリケーション内で再生できる形でアップロードしていたのですが、最初の配信から2回ほど回数を重ねたタイミングで、とあるエンジニアが社内のみから閲覧できる配信サイトを構築してくれました。もともと社内サイトの立ち上げは考えていたのですが、あっという間にできてしまうスピード感にとても驚いたのを覚えています。 このサイト立ち上げを契機として、今では社内で行われる勉強会やワークショップも有志が音声もしくは動画を収録し、このサイトでアーカイブをいつでも視聴できるようになっています。

CEO Radio で何を話しているか

CEO Radio でどのような話題を取り上げるのかについては、特に決まりはなく、いろいろな試みをしているのですが、その中のいくつかをご紹介してみようと思います。

会社の直近の動きに関わる話

今年の11月に、投資一任型のプロダクトである「おまかせ投資」をリリースしたタイミングなどで、なぜ FOLIO はこれまで展開していた「テーマ投資」のみならず、複数のサービスを展開するのか、そこにどのような狙いがあるのか?今後どのようなプロダクトを展開するのか?などについて語ってもらったりしています。 FOLIO が提供する投資プロダクトや開発するシステムはそれぞれ単体で充分に巨大であり、メンバーは自分の担当範囲のことは知っていても、それ以外の部分についてはどうしても疎くなったり、複数のプロダクトやプロジェクトが会社全体の観点からどのようにつながっているのかも意識しづらくなってしまうことも、しばしばあります。CEO Radio で会社全体からみた各プロジェクト・プロダクトの位置づけをフィードバックし、メンバーのモチベーションに繋がるようにしています。

You は何しに FOLIO へ?

FOLIO メンバーをゲストに呼び、ゲストが FOLIO にジョインする前に何をしていたか?なぜジョインしようと思ったのか?について語ってもらうシリーズ。あるメンバーは「FOLIO に入るか、プロのポーカープレイヤーになるかを悩んだ」と語ったり、甲斐が、あるメンバーとの初対面を振り返って「最初は感じの悪い子だと思った」と思っていたという、今でこそ言える話が出たり… FOLIO メンバーの個性も相まって、毎回楽しく興味深い話を聞かせていただいています。

スタートアップ入門

もともと投資銀行でのトレーダーというキャリアを歩んできた甲斐が、スタートアップを立ち上げるうえで気をつけたこと、大切にしていることを教えてくれるシリーズ。いずれは FOLIO で成長したメンバーが "FOLIO mafia" として新たなベンチャー企業をどんどん立ち上げて行ってほしい、という甲斐の願いが込められているシリーズでもあります。

お便りのコーナー

社内のみからアクセスできる投稿フォームがあり、ここに集まったお便りに甲斐が答えるコーナーを定期的に設けています。FOLIO メンバーからはよく鋭い質問が飛んで来ますし、質問した人が納得できるようなトークにできるのかという意味で、聞き手としては比較的緊張するのがお便りのコーナーだったりします。個人的には、最近収録した「FOLIO のミッションとバリューに込めた意味や意図を教えてほしい」という回が非常に良かったなぁと思っています。

まとめ

FOLIO での、会社規模が大きくなってもビジョンや文化を組織の隅々まで浸透させるための取り組みについてご紹介しました。もちろん CEO Radio を聴くかどうかは社員にとっては任意ですし、このような取り組みで全てを解決しようとは考えていないからこそ、他の手段も使いながら組織のスケールアップに合わせた文化形成は引き続き頑張っていきたいと思っています。

そんな FOLIO では、一緒に働くメンバーを募集しています。少しでも興味を持った方は、一度気軽に FOLIO のオフィスに遊びに来てみませんか? www.wantedly.com

明日の FOLIO Advent Calendar 2018 - Adventar は、いつも何から何までお世話になってる kenchan0130 による Google App Script の話 です!